ヒーラー

はじめての経験である。

一日遅れではあるけれども,ICPのため横浜にやってきた。
実は初めての英語でのポスター発表であり,緊張気味である。できれば英語を一言も使うこと無く帰りたい。

横浜に向かう新幹線でICPのスケジュールを調べていたら,突然,隣のおばちゃんが「私,ハンドヒーリングっていうのやってて,どこか悪いところありません?ちょっと体験してみません?」と声をかけてきたのである。

そんなことをいきなり申し出されたところで,実は骨折していてですね,そこを治してくれませんかね,なんてお願いする気にもならず無視しようと思っていたが,おばちゃん,結構粘る。

おばちゃんがなぜその「パワー」を手に入れたのかという経緯をしばらく聞かされてから「すごいでしょ?信じられないでしょ?」とやたら同意を求められるので,<そうですねぇ…すごいですねぇ…>なんて相槌を打ってしまったものだから,おばちゃんはさらに押してくる。

「ねえ,ほんと,ちょっとだけ体験してみない?どこか悪いところあるでしょ?」と私の悪いところをなんとか探そうとする。

ちょっと面白くなってきたので,実は骨折していることを言うと,「なるほど。じゃあ,いまからパワーを送るから手を出してね」と言われ,折れている方の手を出すと,おばちゃんは,両手で俺の手をかざしながら何やら「パワー」を送ってくれているらしい。おばちゃんいわく,温かかったり冷たかったり痺れたりするかもしれないというが,身体の一部に意識を向けていれば,普段よりも鋭敏に身体的変化に気づくんとちゃうんか?なんて思いながら,あえて風景を見て気をそらすようにしてみた。おばちゃんがしばらく「パワー」を送ってから「何か感じる?」と聞かれるが,正直よくわからないので,その通り伝えるとおばちゃん,突然涙を流し始める。

私としては,ただでさえ新幹線内で隣の人に手をかざされている光景がちょっと恥ずかしいと思っているところで(もちろん,通りすがりの乗客は私達を凝視しながら通り過ぎていく),泣かれたりするので困惑しっぱなしである。おばちゃんによると私の痛みが伝わってきて「辛かったでしょう…」ということらしい。確かに痛かったし不便ではあったが,別に泣くほどのことでもなかったので更に困ってしまう。そして,私は不感症なのかパワーのようなものは一つも感じられない。おばちゃんにも<何も感じないんですけど,僕おかしいんですかね?>と聞いてみたが,そういう人もいるらしい。

その後,肋骨にも遠隔でパワーを送ってもらったけれども,こちらも特に何も感じなかった。

パワーを送ってもらった後に,なんで私に声をかけたのかと聞いてみたら「なんとなく声をかけなくちゃいけないと思った」かららしい。そんなに困った顔をしていたのだろうか…。

その後,おばちゃんが新幹線から降りるまで,結構な時間,おばちゃんのケガの話やら家族の話やら師匠の話やらを聞かせてもらって,最後に名刺を頂いてお別れした。

なかなか貴重な体験をしたものである。

ちなみに,骨折の方は7割方くっついたらしくギプスもなく日常生活に支障もなくジョギングも再開している。

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